大学全構成員のセンター利用アカウント登録に伴う

センター業務の変化

 

岸場清悟*1、津久間秀彦*2、稲垣知宏*3、勇木義則*4、新畑道江*5,入江治行*6

 

広島大学総合情報処理センター

739-8526 東広島市鏡山 1-4-2

TEL0824-24-6256

AX0824-22-7043

*1kishiba@ipc.hiroshima-u.ac.jp

*2tsukuma@ipc.hiroshima-u.ac.jp

*3inagaki@ipc.hiroshima-u.ac.jp

*4yuuki@ipc.hiroshima-u.ac.jp

*5michie@ipc.hiroshima-u.ac.jp

*6haru@ipc.hiroshima-u.ac.jp

 

 

概要

 

広島大学総合情報処理センターでは平成8年7月から大学全構成員のセンター利用アカウント登録の運用を行っている。センターの業務内容をサービス空間として捉える視点からこの運用のセンター業務への影響を評価する。

 

 

キーワード

 

センター運営、サービス空間、大量アカウント、利用者対応

 

 

 

 

 

 

 

Changes about services of computer center, with registration of all members in Hiroshima University.

 

Seigo Kishiba, Hidehiko Tsukuma, Tomohiro Inagaki, Yoshinori Yuuki,

Michie Niihata, and Haruyuki Irie

 

Information Processing Center, Hiroshima University

Kagamiyama 1-4-2, Higashihiroshima, Hiroshima 739-8526 JAPAN

TEL +81-824-24-6260

FAX +81-824-22-7043

 

 

Abstract

 

At IPC, Hiroshima University, have been registered all members in the university and administrated their accounts from Jul 1998. We evaluate the effect of this registration for the service of IPC with new perspective 'service space'.

 

 

Keywords

 

management of center, service space, huge number of accounts, user support

 

 

1.はじめに

 

広島大学総合情報処理センター(以下センター)では、学生・教員の区別なく大学の全構成員にオープンな計算機利用環境を目指している。平成8年4月の計算機システム機種更新[1]のあと同年7月より大学全構成員のセンター利用アカウント登録の運用を開始し[2]、現在に至っている。この運用は2万人規模の利用者に計算機サービスを提供するという画期的なものであると同時に、センターが提供するサービスの内容について大幅な修正を迫るものであった。そこでこの発表では、センターの利用者へのサービス空間という視点を用いてこのアカウント登録運用を評価することを試みる。

 

 

 

 

 

2.ネットワーク時代におけるセンターサービス空間の質的変化

 

 

2.1 センターサービス空間の定義

 

大学において総合情報処理センターが利用者にとって良いサービスを提供するには、利用者の活動の流れをたどって、利用者がどの段階で、どういう目的で、どんな情報や機能を欲するのかを描き出す必要がある。さらに、全体の整合性をつねに意識して、広報までを含めて利用者サービス内容を設計しなくてはならない。

この設計にあたって、総合情報処理センターが一般的なセンター利用者に対して提供するサービスを、いくつかの次元で構成される「サービス空間」として考える。サービス空間は本来非常に多くの次元からなる空間であるが、ここでは「利用環境」と「利用目的」および「利用者要望」の3つの次元からなる部分空間を考える(図1)。

 

 

2.2 大学全構成員アカウント登録とサービス空間変化

 

 前節で定義したサービス空間のうえで、近年のセンターサービス業務の変化についてその位置づけを行ってみる。大学内外のネットワーク接続環境の急速な変化により、まず「利用環境」と「利用目的」の多様化が進んだ。すなわち、

・それまではセンター設置の端末を使用してセンターの計算機システムを利用していたのが、平成5年度に学内LAN(HINET)が整備されたことにより研究室のパソコンやワークステーションから接続する利用ができるようになった(利用環境の多様化)

・情報処理センターの開設当初には、センター利用者の利用目的は高速科学技術計算やデータベース検索とそれらに関する講義、および事務処理でほぼ尽くされていたが、ネットワーク環境の発達により、電子メール(図2)やWWWページによる情報の受信・発信が教職員のみならず学生にとっても必須のものとなった(利用目的・形態の多様化)

センターではさまざまな新しい業務を行うことによりこれらの変化に対応してきた。そのなかでも特に大きなものとして挙げられるのが、平成8年7月より開始した学内共通経費による大学全構成員のセンター利用アカウント登録の運用である。それまでセンター利用負担金の支払い方法が校費振替しかなかったために実際には一部の教職員およびそのもとで学ぶ学生しかセンター計算機システムを利用できない状態だったのが、これによりようやく大学全構成員のセンターの利用が実質的に可能になり、上記の二つの多様化に対応したセンター利用環境を提供することになった。

 

 

2.3 大学全構成員アカウント登録のセンター業務への影響

 

大学全構成員のアカウント登録により、センター利用者数は飛躍的に増大し(表1)、サービス空間の変化をさらに促すことになった。たとえば、

・利用者からの問い合わせ内容がプログラム相談など技術的な内容から電子メール受信の設定補助など利用サポート的な内容に移ってきた。また、プライバシー保護などのネットワーク社会に関する新たな問題も取り扱う必要が出てきた(利用者要望の多様化)

・ネットワークを通じた利用についても、大学の研究室からの利用のみならず自宅から電話回線を通じた利用が盛んに行われるようになった。接続用のアプリケーションも多様なものが使われるようになった(利用環境の多様化)

このようにサービス空間が大きくなることにより、センター業務において次のような困難が現出することになった。

・多様な要望に対応してサービス内容の改善を行うので、その多くの改善内容のあいだで整合性を保つことが難しくなった。

・利用者の問い合わせ対応が多岐にわたり、それまで個別の相談にもほぼ対応できていたものが、センターでは対応しきれない問い合わせが多くなった。

 

 

3.まとめ

 

計算機環境の急速な変化に伴い、各大学における情報処理センター(または類似の組織)が提供するサービスは急激に変化している。ここではその内容をいくつかの軸にまとめてサービス空間の広がりとして考え、整理することを試みた。

センターでは大学全構成員のアカウント登録の開始後、多様な要望への対応により業務全体の整合性の確保が困難になりつつある。このように大規模なシステムを限りある人員で運用するためには、利用者の要望に個別的に対応するのではなく、標準的サービスを提供することが必要であろう。そのためには、センターの業務全体を統合して構築し企画できるコーディネーターの存在、さらに利用者に対しサービス内容や運用ルールをわかりやすく伝える広報が重要になると思われる。

 

 

参考文献

 

[1] 岸場清悟,,“総合情報処理センターのシステム構築−教育と研究の統合環境−”,平成8年度情報処理研究集会講演論文集,pp.209-211,Dec 1996.

[2] 勇木義則,,“大学全構成員のセンターシステム利用を目指して−利用者管理の運用を中心に−”,平成8年度情報処理研究集会講演論文集,pp.325-328,Dec 1996.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広島大学総合情報処理センター利用登録者数の推移

 

 

登録アカウント数

平成74

1,290

平成84

2,062

平成87

学部学生アカウント

13,832

その多のアカウント

3,124

平成94

学部学生アカウント

13,848

その多のアカウント

4,699

平成104

学部学生アカウント

13,674

その多のアカウント

5,004

 

参考:登録対象の大学構成員数(平成10819日現在)

学部学生 13,676

学部学生以外 10,555(職員:4,323 学生:6,232