情報処理教育環境について

 

車古 正樹

 

金沢大学総合情報処理センター

920-1192 金沢市角間町

TEL076-234-6912

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キーワード

 

 情報処理演習、教育用システム

 

 

1.はじめに

 

 センターでは、平成7年度から情報処理教育環境を整備するために、教育支援機器の充実と計算機システムの充実を行ってきた。計算機システムについては、平成9年度に更新を行った。このシステム更新を行うにあたっては、センターの情報処理教育専門委員会(以下、教育専門委員会という)と学内の情報処理系幹事会(以下、幹事会という)で、情報処理演習システムの基本構想が策定された。この基本構想を基にセンターのシステム運用専門委員会で教育用システムを含む全体のシステム構想について検討された。システムの詳細については仕様策定委員会で決定した。上記委員会のうち、教育専門委員会はセンターの教育用システムを検討する委員会であり、幹事会は教養的科目における情報処理教育について検討する委員会である。

 本稿では今回導入したシステムと現在の情報処理教育環境について報告する。

 

 

2.情報処理教育の現状

 

 

2.1 教養的科目におけるコンピュータ教育

 

 幹事会では、平成8年度から教養的科目における情報処理教育について、担当教官、TA、科目などの問題について調査・検討された。この検討事項の中で、演習科目について取り上げると、「平成9年度から演習科目に1名のTAが認められたこと。科目名を平成10年度から統一すること。」がある。特に、全学部生を対称としたテーマ別・一般科目について、より多くの学生が演習科目を受講できるようにするため科目名の統一は重要なことであった。統一された科目名うち演習を伴う科目名は以下のものである。

・情報処理演習 A:計算機リテラシー教育としてのコンピュータ実習(コンピュータ入門、基本操作、文書処理、表計算など)

・情報処理演習 B:計算機リテラシー教育としてのネットワーク実習(電子メールと掲示板、WWWブラウザ、HTMLなど)

・情報処理演習 C:計算機リテラシー教育としてのOSの基本(UNIXなど)

・情報処理演習 D:プログラミング言語教育

 なお、上記の他に教養的科目に工学部の基礎科目である情報処理演習がある。

 

 

2.2 教科書の作成

 

 システム仕様決定後、工学部情報処理教育小委員会で、平成5年度に作成した教科書「コンピュータ基礎と演習」を基に、情報処理演習、 情報処理演習 A 情報処理演習 B で利用できる教科書「情報処理演習」が作成された。

 内容は下記のとおりである。

 ・基本操作:フロッピーディスクの初期化、ファイル操作、タイピング練習(Trr

 ・電子メール(Al-Mail):電子メールについて、Al-Mailの基本操作、機能について

 ・ブラウザとホームページ作成:WWWサーバについて、ホームページの作成方法

 ・文書処理:Word97の基本操作、文書の作成と編集、表や図の取り扱い

 ・表計算:Excel97の概要、Excel97の基本操作、Excel97の機能について、

 ・プログラミング:Delphiの基本操作、基本プログラミング、GUIプログラミング

 ・付録A。コンピュータ入門:コンピュータの仕組み、ソフトウェアのいろいろ

 ・付録B。教育実習におけるコンピュータ環境とネットワーク、利用に際して

 

 

3.情報処理演習環境について

 

 

3.1 ハードウェア

 

 表 1は、実習室に配置されたハードウェアシステムである。これらのハードウェアはパソコン系については団地毎に専用のサブネットを組み、各サブネットを1つのWindowsNTドメインおよびサブドメイン名として、DNSサーバ、ドメインサーバ、WINSサーバ、DHCPサーバを利用することにより、ネットワーク管理やユーザ管理を一元化している。UNIX系については専用のサブネットとし、サブドメイン名はセンターと同一のものを利用している。

 なお、実習室などにWebカメラを設置し、学内のどこからでも現在の部屋の状況が把握できるようになっている。

3.2 ソフトウェア

 

 表 2はパソコン用のソフトウェアである。これら以外のソフトウェアについては、教育専門委員会でいくつかの基準を設け、追加が可能となっている。

 

 

3.3 サーバシステム

 

 表 3は教育用のサーバシステムである。セルフメンテナンス用サーバは1実習室あたり約15台のクライアントを割り当て、1台あたり約30台のクライアントを割り当てている。講義用WWWサーバは8台のパソコンサーバにSiteServerで分散し、DNSサーバで負荷が均等になるように振り分けている。

 

 

4.問題点と今後の課題

 

 

4.1 情報処理演習の開講数

 

 平成10年度の前期に開講された「情報処理演習 AB」の科目数は4科目のみであり、受講希望学生が殺到し、1科目あたり定員60人のところ約250人程度の申し込みがあり、4分の1以下の学生しか受講できない状態である。このことについて、現在情報処理系幹事会で、受講希望学生数の調査、他系・自系の教官の協力態勢、開講科目の変更、について検討中である。また、現在1科目に1人のTAが認められているが受講生からTAを増やしてほしいという要望も強い。なお、後期においても「情報処理演習 AB」は3科目のみである。他の演習科目では前後期を合わせ「情報処理演習 C」が1科目、「情報処理演習 D」が6科目である。

 

 

4.2 ソフトウェア

 

 セルフメンテナンスを導入することにより、従来のシステムに比べパソコンの環境が常に同一であるため、アイコンの不統一やプログラムオプションの設定値の違いによる混乱がなく、授業が非常にやりやすくなった。その反面、その日の最初の立ち上げに約10分程度有し、2回目以降のログインに約3分有する。このため、45月頃はかなり苦情が多かった。

 この解決策の1つとして、9月初旬にリモート管理ができる自動電源ON/OFFのソフトウェアを導入する予定である。

 

 

 

 

4.3 教育支援機器

 

 平成7年度と8年度に教育支援機器として映像システムを導入した。しかし、パソコンの画面など細かい映像について釣り下げ型モニターのため見にくいという受講生がかなりいる。このため、平成10年度に導入した映像システムは2人に1台の割で机上に設置した。

 見にくさの解決策の1つとしては、「教育支援ソフトウェア」の導入が考えられるが、現在導入を予定していない。別の解決策として、4月に共通マニュアルや教官の講義用資料を提供できるWWWサーバの立ち上げと、サンプルデータを提供できるftpサーバを立ち上げた。7月にはFAQ用のBBSを立ち上げた。

 

 

4.4 その他の支援

 

 玄関の案内用ディスプレイに、最初は案内用システムプログラムを購入し運用したが、自由度が少なく現在はWWWで運用している。また、自習を行うために学生が総合教育棟からセンターに来て始めて利用状況が把握できる。これを、センターに出向かなくても総合教育棟で分かるように、案内版を総合教育棟のラウンジなどに設置することを検討する必要がある。

 

 

5.おわりに

 

 今回のシステムの更新により、学内的に情報処理教育の見直しと検討が活発に行われる機会を与えたことは、今後の情報処理教育の推進に非常に有益であったと思われる。平成11年度にはテーマ別・一般科目において5科目増の38科目になり、うち演習科目では「情報処理演習 AB」が4科目増の11科目に、「情報処理演習 D」が1科目増の8科目となることになった。

 次回のシステム更新において汎用機を廃止する予定である。このため、3年内に現在も汎用機を利用して授業を行っている教官に対してパソコンへの以降、汎用計算機で利用している統計処理ソフトの代替品のパソコンへの導入、を検討していかなければならない。これらの問題についても、今から幹事会と教育専門委員会と協調し、解決していかなければならない。