情報コンセントのユーザ認証について

 

久長 穣*1、岡田 隆*2、刈谷 丈治*3

 

*1,3山口大学総合情報処理センター

TEL0836-35-9496

FAX0836-35-9497

*1hisa@yamaguchi-u.ac.jp

*3joji@yamaguchi-u.ac.jp

 

*2山口大学附属図書館

TEL0836-9410

FAX0836-35-9499

haido@po.cc.yamaguchi-u.ac.jp

 

 

概要

 

 平成9年度、山口大学総合情報処理センターと附属図書館は情報コンセントを設置した。情報コンセントは端末を接続し電源投入すれば、端末のネットワーク設定が自動的に行なわれる。誰でも容易にネットワークが利用できる反面、利用者を大学構成員などに限定することは困難である。情報コンセントを大学構成員であれば誰でも自由に利用できるようにするため認証機能を導入したので報告する。

 

 

キーワード

 

情報コンセント、ユーザ認証、DHCP

 

 

1.はじめに

 

ネットワーク利用者の多くは、個人所有の携帯端末(例えばノートパソコン)を持ち歩いて利用していることが多くなってきた。携帯端末がネットワークを利用するためには何らかの方法で、学内LANに接続する必要がある。いくつかの手法が実用されているが、利用方法の簡便さ、通信速度の高速化の点で、携帯端末にイーサネットのネットワークカードを挿入し、教室あるいはホールに用意されたモジュラコンセントに接続し、学内LANを利用する情報コンセントが有効である。

情報コンセントにおいても利用者を限定するため、また、誰が利用しているかを明らかにするため、利用者が利用を始める前にあらかじめ、情報コンセントの利用のための認証機能が必要となる。本学においては、情報コンセントの認証機能を導入し運用している。ここでは、この認証機能について報告する。

 

 

2.情報コンセント

 

 

2.1 ネットワーク構成

 

運用している情報コンセントの論理ネットワーク構成図を図1に示す。図中のDHCPサーバは情報コンセントに接続された端末へ設定を指示するほか、学内LANへのルータ、ネームサーバ、認証のための画面と処理を提供するWebサーバとして機能する。物理的なネットワークはATMイーサスイッチを介しATMネットワークに接続して、情報コンセントのELANを構成している。情報コンセントELANに属しているATMイーサスイッチの設置場所は総合情報処理センター及び附属図書館である。各部局にATMイーサスイッチをATMネットワークで接続し、情報コンセントELANに参加すれば、各部局において各種サーバを設置することなく、情報コンセントを設置することができる。

 

 

2.2 DHCPサーバ

 

DHCPサーバは次のハードウェア及びソフトウェアで構成される。

ハードウェア DOS/Vパソコン CPU 486DX2 66MHZ

ソフトウェア OS FreeBSD 2.2.5-RELEASE

DHCPサーバ WIDE DHCP server 1.4.0

WWWサーバ Apache 1.2.5

ルータ機能 (OS標準)

フィルター機能 IPFW(OS標準)

 

 

2.3 端末設定

 

 DHCPサーバは情報コンセントに接続された端末の電源投入時にその端末からの問い合わせに対してIPアドレスなどの諸条件を送信し、該当端末のネットワーク設定を行わせる。その際、自動設定される主な項目は以下のものがある。

    1. IPアドレス
    2. サブネットマスク
    3. ルータ(ゲートウェイ)アドレス
    4. ネームサーバアドレス

 ここで(1)は接続毎に異なることがあるが、(2)〜(4)は同じである。

 

 

3.情報コンセントでの認証

 

 

3.1 認証の条件

 

情報コンセントをある特定の利用者のみに利用を許可する場合、次の3点に注意が必要である。

  1. 利用を許可された人のみが、情報コンセントに接続でる必要がある。言い換えると、許可されていない人は情報コンセントを利用できてはならない。
  2. 利用している間は、誰が利用しているかを明らかにする必要がある。
  3. 利用を終了したことを感知できなければならない。
  4. これらに加えて、導入に当たっては次の点を考慮した。

  5. 全学どこからでも、同じように利用できる。
     本学はキャンパスが分散しているため、キャンパス間の移動が困難であり、キャンパス内の状況が異なっている。移動の問題はマルチメディアネットワークを使って移動しないようにできるかもしれないが、人の移動をともなう交流が望ましい。できるだけキャンパスの独自の状況を無くし、どのキャンパスに移動しても同じように利用できるよう配慮した。
  6. IPアドレスはできるだけ、利用者固有のものとする。
     これは(2)の条件をより進めたものである。すなわち、IPアドレスを利用者固有にすることにより、情報コンセント利用時にはIPアドレスは不変となる。
     不正利用等があった場合、サーバ側のログ情報にはクライアントのIPアドレスが残されているため、IPアドレスをもちいて追跡しやすくすることにより、不正利用などのいたずらを防止する効果を期待している。(ただし、完全に防止できるわけではない。)
     一人に一つづつIPアドレスを割り当てようとした場合、本学の構成員の総数は1万数千人であるので、IPアドレスは1万数千個必要になる。そこで、プライベートIPのクラスB(172.16.0.0-172.31.0.0の内)を利用することにした。プライベートIPを使用しているので、インターネットを利用するには、学内に設置されたサーバや、プロキシを経由して利用しなければならない。
     割り当て方法については、入学時に割り当てるという案もあろうが、周知の手続き等を考えると現実的でない。今回はDHCPでアドレスを割り当てる際に、一度割り当てたアドレスはそれ以降、そのMACアドレス以外には割り当てない機能があるので、これを利用して割り当てることにした。

 

 

3.2 認証方法

 

認証の手順は次のとおりである。

  1. 利用者が端末を情報コンセントに接続し、電源投入後、DHCPサーバより該当端末のネットワーク設定が自動的に行われる。
  2. 利用者はWWWブラウザを用いて、http://ic.lib-e.yamaguchi-u.ac.jp/(図1 でのDHCPサーバ)に接続する。図2のパスワード受付画面が表示されるので、総合情報処理センターのメールサーバのユーザ名とパスワードを入力する。
  3. WWWサーバはcgiを用いて、入力されたユーザ名とパスワードをセンターのメールサーバに問い合わせる。処理を単純化するためPOPサーバの認証機能を利用している。
  4. (3)の問い合わせが正しければ、WWWサーバは「情報コンセントが利用できる」というページを送出し、該当端末のIPアドレスに対し通過可能のフィルタをルータに設定する。これにより、該当端末は学内LANと通信できるようになる。(注意:ルータのデフォルト設定は学内LANへのすべての通信は禁止である。)(3)の問い合わせが間違っていれば、WWWサーバは「パスワードが間違っている」というページを送出するほかは、特に何もしない。
  5. ルータのARPテーブルに該当端末のエントリがなくなった場合
  6. 、該当端末が情報コンセントの利用を停止したと判断し、(4)で設定したルータのフィルターを解除する。これにより該当端末は学内LANと通信できなくなる。

 

 

4.おわりに

 

本学に設置されている情報コンセントは定常的に多くの利用者で利用されており、必要性が増している。情報コンセントの認証機能の導入について述べた。しかし、完全な認証を提供できるものではない。今回の認証機能には次の問題点がある。

  1. DHCPサーバは端末に認証なしで情報を送出してしまう。そのため、情報コンセント内の通信は認証なしに利用できてしまう。このために、DHCPサーバに認証機能を持たせるか、情報コンセントの個々のコンセントでフィルタリングの機能を設置する方法などを導入する必要がある。
  2. 端末が情報コンセントを利用停止した時点で、そのことを直接知ることができない。そのため、停止後もしばらく該当IPアドレスの通過フィルタが設定されてしまう。このためには、利用を停止したことを知らせる方法、あるいは、利用中を知らせる方法が必要となる。

今後、情報コンセントの利用者は増えていくこと、総合情報処理センターや附属図書館だけでなく各学部においても情報コンセントを設置されることが予測される。端末側のOSを含めて、情報コンセントの認証機能を整理し、充実させていく必要がある。

 

1 情報コンセントの論理ネットワーク構成図

図2 情報コンセントのパスワード入力画面