センター紹介 山口大学総合情報処理センター

 

小嶋 直哉

 

山口大学総合情報処理センター

〒755-8611 山口県宇部市常盤台 2557

TEL:0836-35-9496

FAX:0836-38-9497

d-center@po.cc.yamaguchi-u.ac.jp

 

 

1. 山口大学の概要

 

 山口大学の源流は、1815年(文化12)に長州藩士上田鳳陽が山口の中河原に山口講堂を設立したことにある。その後幾多の変遷を経て、1949年(昭和24)に総合大学として再出発し、来年の5月には50周年を迎えることとなる。現在では7学部1短期大学部に、学生9,400名、教職員2,000名が在籍し、敷地面積は30haを超える比較的規模の大きな総合大学として位置づけられる。

しかしキャンパスは、人文学部、教育学部、経済学部、理学部、農学部、共通教育センター等がある山口市の吉田キャンパス、工学部がある宇部市の常盤キャンパス、および医学部、附属病院、医療技術短期大学部がある宇部市の小串キャンパスに分散している。特に山口地区と宇部地区は40数kmも離れていることから、学生や教職員の移動に多大の労力を要している。また、附属学校についても山口市内と50km離れた光市に分散している。

このような地理的状況において、情報ネットワークは山口大学における日常活動の生命線であり、従来のデータ通信の機能もさる事ながら、特にマルチメディア機能を高めることが重要であると言える。計算機システムとマルチメディアシステムをネットワークで結合した情報基盤の整備充実は、特に本学にとって極めて重大な課題であり続けることに疑いはない。

 

 

2.センターの沿革

 

当センターは、学内共同利用施設である電子計算機室として1965年(昭和40)に発足した。以来30余年にわたり、山口大学における学術研究及び教育に関する情報基盤の提供と整備に努めてきた。

 1978年(昭和53)10月に山口大学計算センターへと名称変更を経て、1981年(昭和56)8月には山口大学情報処理センターが正式に発足した。その際、利用者の急激な増加に対処するとともにサービスの向上を図るため、山口分室と小串分室が設けられた。

1982年(昭和57)1月の機器更新に伴いACOS800が導入された。センターに主機(主記憶6MB)、ディスク(実効記憶容量3.5GB)を置き、これと山口分室および小串分室に設置したミニコンMS70を特定回線で接続しており、いずれのキャンパスからもセンターの計算機が利用できる形態を導入するとともに、図書館業務の一部にも利用される事となった。さらに九州大学大型計算センターとN1プロトコルで接続し、回線速度もこれまでの2400bpsから9600bpsへと増速された。計算機利用の増加は著しく、1984年(昭和59)8月にはACOS850に更新された。この更新により、計算速度は3倍、主記憶も20MBとなり、ディスクにチャネル制御を導入した結果、処理能力が著しく向上した。この間に利用者側では工学部を中心に、研究室からMS8やPC-MUXなどによるセンター利用を進める動きが強まった。計算機のネットワークを介した利用の走りである。その後、電話回線を用いたTSS等による研究室からの計算機利用が増えるとともに、ジョブの長時間化、大容量化が進んだ。センターとしては、通信機能の充実とホストコンピュータの主記憶容量の増加が急務となり、翌年10月には主記憶を20MBから32MBに増強した。

社会における情報環境は大きく変化し、産業界では情報処理技術者の不足が指摘されはじめた。これに対応して、教育界への情報処理教育の強化が要請されるに至った。センターでは情報処理教育の強化と、広い意味での情報処理サービスを提供するため、パソコン、ワークステーション、大型汎用計算機の利用等、利用者の多様な選択を可能とするようにシステムを強化する事とした。1998年(昭和63)4月に常盤分室が設置され、8月には教育用および研究用端末を増やすとともに、これをLAN接続とした。また、研究開発室のワークステーションでUNIXのサービス、およびJUNETによるメールサービスも開始した。1989年(平成元)3月に学術情報ネットワークSINETに加入し、全国の大型計算機センターとの接続を強化するとともに、大学間電子メールサービスを開始した。

センターの利用形態が変化するに連れて、学内ネットワークの整備とセンターの拡充が重要であるとの認識が高まった。一方、山口大学将来計画検討委員会において総合情報通信ネットワーク構想が検討された。1990年(平成2)4月には機器更新の作業を進めた。この時のシステムは、ホストコンピュータACOS830/10を常盤キャンパスに設置し、分室にワークステーションとパソコンを配置した構成であった。センターと山口分室とは64kbps、小串分室とは128kbpsの専用回線で接続された。これに加えて教育用デスクトップパソコンとノートパソコンを多数導入した。

ネットワーク環境のさらなる改善に対してその必要性が認識され、整備のための活動が積極的になされた。1991年(平成3)7月には、学外との接続がIP化され、また翌年10月には国際ネットワークとの通信が可能となった。1993年(平成5)1月には、九州地域ネットワークKARRNに加入し、対外接続を64Kbpsに増速した。これに対して学内では、6月に工学部が独自にLANを敷設したことから他の学部においてもその要望が高まり、センターの支援の下で理学部、農学部、教養部のそれぞれ一部においてLANの構築が進んだ。

この様な状況において、平成5年に全学にわたるネットワークの敷設が認められ、翌年3月に各キャンパス内のイーサネットワークによるLANを、キャンパス間64kbpsの専用回線で結んだ山口大学情報ネットワークYUNETが発足した。ネットワーク強化のための活動は継続して推進され、キャンパス間の専用回線は128kbps、さらには512kbpsへと増速された。省令施設化のための概算要求については本省との協議が重ねられ、平成7年度概算要求として採択されるにり、1995年(平成7)4月に山口大学総合情報処理センターが発足した。またネットワーク環境も強化され、対外接続、および3キャンパス間接続ともに1.5Mbpsの専用回線で結ばれた。

1996年(平成8)2月には省令施設化に伴う機器更新が検討され、ホストコンピュータを廃止しネットワーク上に各種サーバー群を機能分散させたシステムが構築された。その主な構成は事項に示すとおりである。センターにはこれら大量の機器を設置するスペースがないため、工学部、農学部、医療短期大学部に教室を提供してもらい、情報処理演習室として整備した。

これと並行して、ATMネットワーク、およびそれを用いたTV会議システムが平成8年3月に導入された。これにより3キャンパスはATMで結ばれ、画像、音声、データ、電話等の通信が一元化され、マルチメディア時代に移行した。回線接続は、6月から山口-常盤が6Mbpsの専用回線、常盤-小串が150Mbpsの私設専用回線となった。TV会議システムの導入により、教職員の山口-宇部の移動による負担を大幅に軽減する事が出来た。なおTV会議システムの運用は、庶務部に移管した。

1996年(平成8)にはスペースコラボレーションシステム(SCS)の設置が認められ、平成9年3月に導入された。これに伴って整備された共通教育センターの教室は、120インチのリア形スクリーンを2面装備しており、将来の3キャンパスにわたる遠隔講義が可能な設計がなされた。本システムについても、供与後は共通教育センターにその運用を移管した。回線の混雑を解消するために、山口-常盤については平成8年から9年にかかる一年間の試用の後、回線速度を45Mbpsに、対外接続についても平成10年4月には10Mbpsにそれぞれ増速した。SCS第2局が常盤キャンパスに、さらに念願であった3キャンパスを結ぶ遠隔講義システムの設置が認められ、平成11年3月を目指して導入を進めている。

 

 

3.計算機システム

 

総合情報処理センターにおける計算機の役割は、計算サービス、ネットワーク・サービス、情報処理教育サービス、ファイル・サービスおよび運用管理に大別できる。当センターではネットワークにより機能的に分散処理を行っており、主な計算機とそれによって提供しているサービスについて、以下のようにまとめる。

 

[計算サービス]

・ベクトル計算機(機種:SX-4/2C、主記憶1GB、拡張記憶4GB)

大型アプリケーション等を用いた大規模計算を行う。

数値計算ライブラリ等を使用して計算を行う。

計算サーバのプリ・ポスト処理を行う。ライブラリ等を使用して対話型の処理を行う。

  1. [ネットワーク・サービス]

・WWWサーバ(機種:ファイル・サーバが兼ねる)

・メイル・サーバ(機種:EWS4800/310PX(2台)とファイル・サーバ)

・ニュース・サーバ(機種:S-4/5)

・メイリング・リスト・サーバ(機種:EWS4800/220)

・ドメイン・ネーム・サーバ(機種:EWS4800/310PX、EWS4800/220など)

・GPSサーバ(機種:S-4/IX、S-4/CL4)

  1. [情報処理教育サービス]

 情報処理教育用サーバは別とする。時間外利用の台数も含む。

・山口地区UNIX教室(機種:EWS4800/310EC(50台))

OSやC、Prologなどの教育に使用される。

・山口地区パソコン教室(機種:PC9821Xa7(80台))

リテラシー教育に使用される。

・常盤地区製図情報処理教室(機種: EWS4800/310EC(145台))

CAD、Fortran、Cなどの教育に使用される。

・小串地区パソコン教室(機種:PC9821Xa7(65台))

リテラシー教育や統計学教育に使用される。

  1. [ファイル・サービス]

 RAID5+1の構成で次の容量のファイルを利用者用として提供している。パソコン利用者のファイルもこのファイル・サーバに置かれる。ファイル・サーバは、ネットワーク・サービスなど、他のサービスのサーバになっていることが多い。

・計算サービス用ファイル・サーバ:12GB(機種:UP4800/610、主記憶128MB)

・山口地区一般用ファイル・サーバ:8GB(機種:EWS4800/360SX、主記憶160MB)

・山口地区学生用ファイル・サーバ:24GB(機種:UP4800/610、主記憶128MB)

・常盤・小串地区一般用ファイル・サーバ:6GB(機種:UP4800/630、主記憶256MB)

・常盤・小串地区学生用ファイル・サーバ:20GB(機種:UP4800/610、主記憶128MB)

[運用管理]

・利用計算機登録およびUNIX利用者認証サーバ(機種:UP4800/610)

利用者が自分で使用する計算機に登録する。実際の認証は、NISスレーブ・サーバになっている各サーバが行う。

・パソコン利用者認証サーバ(機種:PC-MA23DSZBAB31、主記憶64MB )

実際の認証は、このサーバのバックアップ・ドメイン・コントローラが行う。

・利用者管理・ログ収集(機種:UP4800/610)

専用端末との組で利用者の登録、アカウントの採取、課金処理を行う。

・計算機運用管理(機種:EWS4800/310PX)

計算機の運転状況の監視、および運用時間のスケジュールを行う。

 

 

4.おわりに

 

 山口大学における地理的に分散したキャンパスを機能的に統合し、総合大学としての特質を十分発揮するためには、情報ネットワークを用いたバーチャルユニバーシティの機能を高めることが不可欠であると考えている。当センターはこのような観点に立って、山口大学および近隣教育研究機関における情報基盤の改善に資すべく活動して行く所存である。