センター紹介 山形大学総合情報処理センター

 

梅林 豊治

 

山形大学総合情報処理センター

〒990-8560 山形市小白川町1丁目4-12

TEL023-628-4681

FAX 023-628-4685

sb189@kdw.kj.yamagata-u.ac.jp

 

 

1.はじめに

 

 山形大学は、人文学部、教育学部、理学部、医学部、工学部、農学部の6学部から構成されており、教職員が約1800名、学部学生が約8500名、大学院生が約1000名を擁する中規模の総合大学である。山形市内の小白川地区に本部と人文、教育、理の3学部があり、そこから約6km離れた市内飯田地区に医学部、約50km離れた米沢市に工学部、約100kmも離れた日本海側の庄内地方鶴岡市に農学部という、典型的な分散キャンパスを有する大学となっている。このため、学部学生も1年次には小白川地区において主に教養教育を受けるが、その後はそれぞれが所属する学部に分かれて専門教育を受けることになる。全学の委員を本部に集めて行う会議は11時以降でないと開催できない、遠く離れた分散キャンパスという状況は、さらに理系の学部が4地区に分散しているという状況は、後ほど説明するように、本学のネットワーク環境、総合情報処理センターの組織や運営などにも大きな影響を及ぼしている。

 本センターの沿革は、昭和41年に米沢地区に設置された計算センターまで遡るようであるが、実質的には、昭和621月に学内共同利用施設として設置された情報処理センターがその前身である。情報処理センターの設置にあたって、センターを小白川地区に移すと共に、工学部のある米沢地区だけでなく、飯田地区と鶴岡地区にもそれぞれ分室を開設し、センターと分室の間を接続するネットワークを構築した。その後、コンピュータ・システムの更新に伴って、平成33月には主要なシステムをUNIX系に移行すると共に、「イエローケーブル」を用いたTCP/IP用のネットワーク(LAN)を構築し、インターネットの利用を可能にしている。本格的なFDDIによる学内ネットワークの構築は平成611月とかなり遅くなっているが、工学部や理学部などそれ以前から独自のLANを敷設してインターネットを積極的に利用していた部局も多い。コンピュータ・システムの完全なUNIX系への移行(平成73月)、マルチメディア(ATM)ネットワークの導入(平成83月)などを経て、平成94月に省令施設として総合情報処理センターが設置されて今日に至っている。

 総合情報処理センターでは、学部との教官人事の交流などの制度を整備してから専任教員の選考を行い、諸規則の整備などを含めて、ほぼ設置後1年を費やして管理・運営体制の整備を行っている。したがって、実質的には、新しいコンピュータ・システムの稼働と相まって、今年度からコンピュータとネットワークの本格的な利用サービスを開始したというところである。

 学部学生の全員に対する半期の情報処理基礎(コンピュータ・リテラシー)教育は、平成8年度の教養部の廃止に伴って、平成9年度から全学部で実施されるようになり、全学共通の「情報処理テキスト」も作成されている。それ以前から所属する学生に対する情報処理教育を実施している学部も多く、卒業研究などに伴う利用登録も含めると、本センターのコンピュータ・システムには、すでに過半の学生が利用登録されている。ここ12年のうちに、全学のすべての学部学生が情報処理基礎教育を受講し、与えられたログイン名を使ってその後の専門教育を受ける体制が整うことになる。

 以下では、本学のネットワーク環境、センターの組織と運営体制、コンピュータ・システムの構成についてその概要を説明し、利用状況をまとめることによって本センターの現状を紹介する。

 

 

2.本学のネットワーク環境

 

 通称YUnetと呼ばれている本学の通信・情報ネットワークは、FDDI系およびATM系の2種類のシステムからなるローカルエリアネットワーク(LAN)、電話系、テレビ会議から構成されている。電話系とテレビ会議系が含まれているのは、FDDIネットワーク整備の際に、小白川地区と米沢地区に新しい交換機(PBX)を導入し、内線電話網のダイヤルイン化、小白川、飯田、米沢のキャンパス間の電話網を内線化すると共に、各地区にテレビ会議システムを整備したからである。このため、キャンパス間を接続する装置としてフレームリレー交換機(Northern TelecomMagellan Passport)が導入されており、LANと電話系が各地区の間を接続する1.5Mb/sのスーパーディジタル回線を共用している。さらに、小白川と飯田地区の間には6.3Mb/sのミリ波装置も用意されており、これもフレームリレー交換機に直結されてLANと電話系に利用されている。一方、テレビ会議システムは、残念ながら回線網の混在利用が不可能であったので、現在もISDN回線を利用している。当初は、トラブルが多く苦労したが、現在は、本センターのさまざまな会議、事務系の打ち合わせをはじめとして、頻繁にこのシステムが利用されるようになっており、会議のための小白川地区への出張がかなり軽減されるようになっている。

 学外への接続(IP)は、当初、東北大学大型計算機センターにフレームリレー交換機を設置してSINETに直接接続していた。その後、学術情報センターの方針変更に基づき、東北地区の高等教育機関などを会員とする地域ネットワークである東北学術研究インターネット(TOPIC)のルータに接続先を変更している。本学は東北大学と近い(料金計算のための回線距離は46kmもあるが、山形と仙台は市境を接している。)こともあってNOCになっていないが、県内の高等教育機関や工業技術センターなどのTOPIC会員はすべて本学経由でインターネットに接続している。

 当初、回線速度は1.5Mb/sであったが、日中にはftpの転送速度が1kB/s以下になる劣悪な利用環境を少しでも改善するため、平成912月から3Mb/sにレベルアップした。それでも、インターネット利用時の通信速度に対する利用者の不満は大きいようである。

 LANの各ノードは、FDDI系のノード装置(SMCES/1)とHUBATMスイッチ(FOREASX-200WG)と100Base-TXスイッチ(XYLANOMNI5)から構成されている。各研究室にある情報コンセントとの間はツイストペアケーブル(UTP5)で接続されているので、基本的にはノード側での切り替えによって10Base-T 100Base-TX ATM 155Mbps)いずれのインターフェースも利用可能となっている。小白川地区には12箇所、米沢地区に10箇所、飯田地区に6箇所、鶴岡地区に4箇所のこのようなノードが設置されており、これらの地区から離れた場所にある附属学校や農場をあわせて、合計34箇所にノードが設置されている。小白川地区の場合、FDDI系はセンターに設置されている高速集線装置(DECGIGA-Switch)に、ATM系はいくつかのグループにまとめられて622MbpsでセンターのATMスイッチ(ASX-1000)に接続されている。

また、FDDI系とATM系の間はセンターにあるルータを介して相互に接続されており、この構成は他の地区でも同様になっている。

 YUnetのうちLANの管理・運用を総括する管理者は総合情報処理センター長であり、ノード装置とキャンパス間の接続などの基幹ネットワークの管理は本センターが担っている。ノード装置から先については、各部局に部局管理者(部局長である)と実際の実務を担当する部局担当者を置いて支線部分の維持管理、IPアドレスの割り当てなどの作業を分担している。平成104月現在、端末装置が3,907台、サーバ装置が382台接続されており、今年度も接続台数はさらに増加し続けている。

 FDDI系のLAN運用開始から3年目にあたる平成9年になってからネットワーク機器のトラブル等が頻発するようになったので、平成910月から、定期保守点検業務、故障時の緊急保守点検業務およびLAN監視業務について外部業者に業務を委託することにした。経費はYUnetに関する特殊装置維持費を利用している。これによって故障時の復旧は迅速化されるなどの維持管理体制は利用者がほぼ満足できるものになっているが、修理を要する交換部品費は別途支払うことになっているため、この経費負担の増加が問題である。さらに、メーカが修理そのものを打ち切った製品も出現しはじめており、ネットワーク全体について抜本的な対策を講じる必要性に迫られているのが現状である。

 

 

3.センターの組織と運営体制

 

 はじめに紹介したように、本センターは、センター(小白川)、飯田分室、米沢分室、鶴岡分室から構成されている。センター(小白川)の場合には、人文、社会、理学系の利用者が混在しているので、メールのみからきわめて大規模な数値計算まで利用形態がバラエティーがきわめて大きい。米沢分室の場合には、工学部ということもあって、大規模な数値計算を行う利用者の数が特に多くなる。一方、医学部や農学部のある飯田分室と鶴岡分室では、メール、情報検索、アプリケーション(特にSAS)の利用が中心になっている。このため、後にシステムの構成で説明するように、各分室は独立したシステムを設置して、主に地区内の利用者のために利用サービスを行っている。したがって、それぞれが独自の特色を出しながら、センター全体としてまとまって運営していくという困難な課題を常に背負っていることになっている。

 文部省から認められた定員は、他大学の総合情報処理センターと同様、教官(助教授) 1名、技官3名、事務官1名だが、本センターの場合、それでは到底を全体を運営していけない。このこととネットワークの運用のための人員が不可欠なことを考慮して、学内流用によって、助教授1名と助手1名が加えて配置されている。全員が1箇所にまとまって仕事をしていれば、かなりの組織となるのだが、実際には全体の管理運営を担っているセンター(小白川)に助教授1名、助手1名、技官1名、事務官1名、次に大規模な米沢分室に助教授1名、技官1名が配置されている(現在、技官が1名少ないのは、センター(小白川)に配置する技官1名が選考中のためである)。センターの教員は、期間の延長は可能であるが、職務期間が35年となっており、期間を終えた時点で学部等との人事交流が可能な者を選考することになっている。これは、人事の固定化によるデメリットを避けるために決められていることであり、このようなルールを決めてから実際の教員選考を行ったので、教員全員がそろったのは今年の3月のことである。もちろん、残りの分室でも分室長のみで要員がまったくいないままでは運営できない。このため、飯田分室では医学部所属の技官がセンターの業務を兼ねて処理している。鶴岡分室でも、コンピュータ・システムの管理を分担している教官1名がかなりの時間を割いて分室での業務の処理にあたっている。さらに、協力員の制度も設けられており、特に分室ではこの制度がうまく機能してその運営を円滑にしているようである。

本センター全体の管理運営については、管理委員会と運営委員会が設置されており、最近、運営委員会のもとに整備計画専門委員会と広報専門委員会が設けられた。また、YUnetについては、通信・情報ネットワーク運営委員会とLANの部局担当者をメンバーとする運用委員会がある。後者は、従来から活動していたが、7月に正式の委員会として発足し、ネットワークの利用細則を制定するための検討作業などを精力的に行っている。

 

 

4.コンピュータ・システムの構成

 

 コンピュータ・システムは、新システムが今年の2月から稼働している。分散キャンパスという外的条件もあって、本センターでは、情報処理センター時代の平成33月の更新において、汎用機だけでなく、各分室に分散ホストという名称でワークステーションを導入した。その結果、利用されるシステムは急速に分散ホスト側に移行したので、平成73月の更新では、一般利用には汎用機を完全に廃止し、各キャンパスにUNIXの汎用サーバ(S-4/1000)を導入して、各分室で独自の運用を可能にしている。

 今回更新されたシステムの構成は、次のとおりである。

 

センター

・高速演算サブシステム VX-2E 2CPU 4.8GFLOPS メモリ4GB ディスク100GB)とそのフロントエンドプロセッサ(S-7/300U m1300)で構成。ベクトル処理可能なFortran90C 科学技術計算用サブルーチンライブラリSSLIIが利用可能。

・汎用サーバ S-7/7000U m600 UltraSPARC 250MHz 13CPU メモリ2GB ディスク120GB)と運用管理用ワークステーション(S-7/300U m1300 から構成。プログラミング言語(Fortran90 C C++)、 グラフィックス(OpenGL GKS PHIGS)、 Mathematica, Netscape Java TeX GNUソフトウェア、 MOPAC Gaussian94などが利用可能。

・パーソナルコンピュータなど 90台のFMV-6233D9 (メモリ48MB ディスク3.2GB)と21台のX端末(S-4/X)をセンター学生実習室と教養教育棟情報処理教室に分散配置。PCでは一太郎、Lotus MS-Office97 PC-Xware Netscapeなどが利用可能。

米沢分室

・汎用サーバ S-7/7000U m600 UltraSPARC 250MHz 12CPU メモリ2GB ディスク120GB)と運用管理用ワークステーション(S-7/300U m1300 から構成。プログラミング言語(Fortran90 C C++)、 グラフィックス(OpenGL GKS PHIGS)、 Mathematica, Netscape Java TeX GNUソフトウェア、 Gaussian94 MATLABなどが利用可能。

・図形・画像処理用ワークステーション SGIO2ワークステーション(メモリ256MB ディスク8GB)とカラーレーザープリンタから構成。プログラミング言語(Fortran90 C C++)のほか材料設計支援ソフトウェアCerius2が利用可能。

・パーソナルコンピュータなど 75台のFMV-6233D9 (メモリ48MB ディスク3.2GB)、Power Mac 7600/200 (メモリ48MB ディスク2GB)とPower Book 1400c/133 (メモリ48MB ディスク1.3GB)を計10台配置。MS-Office97 PC-Xware Netscape 図脳RAPID5などが利用可能。

飯田分室

・汎用サーバ S-7/7000U m300 UltraSPARC 250MHz 3CPU メモリ768MB ディスク33GB)で構成。プログラミング言語(Fortran90 C C++)、 Netscape Java TeX GNUソフトウェア、 SASなどが利用可能。

・図形・画像処理用ワークステーション SGIO2 WebFORCEワークステーション(メモリ384MB ディスク8GB)とカラープリンタから構成。Adobe illustrator Adobe Photoshop Web関係ツール、Netscapeが利用可能。

・パーソナルコンピュータなど 100台のPower Book 1400c/133 (メモリ48MB ディスク1.3GB)を実習室等に分散配置。PCではWord Excel Netscapeなどが利用可能。

鶴岡分室

・汎用サーバ S-7/7000U m300 UltraSPARC 250MHz 4CPU メモリ768MB ディスク33GB)で構成。プログラミング言語(Fortran90 C C++)、 グラフィックス(OpenGL GKS PHIGS)、 Netscape Java TeX GNUソフトウェアなどが利用可能。

・図形・画像処理用ワークステーション S-4/10 m51 (メモリ160MB ディスク2GB)とイメージスキャナ、プロッタ、タブレット、カラーレーザープリンタなどから構成。地図情報システム(GIS)が利用可能。

・パーソナルコンピュータなど 30台のFMV-6233D9 (メモリ48MB ディスク3.2GB)と35台のPower Mac 7600/200 (メモリ48MB ディスク2GB)を分散配置。PCではWord Excel Netscapeなどが利用可能。

キャンパス業務情報システム

PCサーバGRANDPOWER5000 m560S98台のノート型パーソナルコンピュータFMV-5133NA5/W (メモリ48MB ディスク1.3GB)から構成。PCサーバにはExchange ServerSQL Serverを、ノート型にはExchange 一太郎、Lotusなどを導入している。

 

 これでもわかるように、各地区が必要とするシステムの機器構成とソフトウェアは、汎用サーバ、パーソナルコンピュータとも大きく異なっている。すでに利用の増加でパンク状態にあった汎用サーバの更新や教育用のパーソナルコンピュータの増強だけでなく、高速演算用サブシステムと事務系のキャンパス業務情報システムの導入が今回の更新の目玉である。高速演算サブシステムの利用は、従来、分散キャンパスのため導入できなかったシステムであり、大規模な科学技術計算を行っていた利用者には待望のシステムである。システムはフロントエンドプロセッサに接続して、NQSを利用してジョブを投入するようになっているので、利用者にとってUNIX系システムの利用環境はすべてSolarisベースとなっている。

 キャンパス業務情報システムは純粋に事務系のためのシステムである。従来から電子メールを利用するため、事務系職員から汎用サーバへの利用登録はかなりの数に上っていた。今回のシステム更新では、電子メールのサービスを行う専用のサーバを導入すると共に、すべての職員に対してこのシステムに対する個人のメールアドレスが割り当てられている。ネットワークの整備などで導入され、同様の目的で利用できる機器を加えると200台以上のPCが事務情報化の推進に向けて活用されるようになっている。

 

 

5.利用状況

 

 新システムの利用状況はまだ集計できていないので、旧システムが平成101月まで運用されていた10カ月間の汎用サーバのデータをまとめると、利用登録者は一般が1,577名、学部学生が4,199名である。システムの稼働時間は約7,300時間、利用件数271,295件、CPU時間59,793時間、端末接続時間は212,580時間となっている。今年度は、7月末現在で、利用登録者は一般が1,555名、学部学生が6,398名に達している。

 高速演算サブシステムは、まったく新しいシステムであるので、利用者が移行するのに手間取ったようであるが、最近では、数人のユーザによって1CPUがほぼフルに稼働している状況である。汎用サーバも、パフォーマンスモニターから推定すると、センター(小白川)の場合、処理能力が3倍以上になっているにもかかわらず、すでにCPUの稼働状況が50%程度になっている。さらに、米沢分室に導入した図形・画像処理用ワークステーションも、Cerius2が待望のソフトウェアであったので、大いに利用していただいている。

 今回のシステム更新は、移行も含めて順調に推移しており、今後4年間の利用増大をこのシステムで支えきれるかが心配されるくらいの状況である。

 

 

6.最後に

 

 新システムの導入して本格的に総合情報処理センターとして活動できるようになってまだ1年に達していないので、できていない業務も数多く存在する。特に、広報関係の仕事は、概要、年報など、まだお寒いかぎりの状態である。分散キャンパスということもあって本センターの増築は困難な状況にあったが、補正予算によってセンター(小白川)の新築が認められ、現在その設計が施設部で鋭意進められている。建物が完成するまでには、他の総合情報処理センターのようにあらゆる業務を円滑に処理できるようにしたいものである。